令和5年の【問10】に抵当権順位の放棄の問題が出ました。
抵当権順位の放棄・譲渡は、過去(平成27年 問7・令和1年 問10)にも出題されている計算問題です。
過去問の解説を読むと何となくその場は理解できるのですが、本番でパニックにならず導けるか自信がありませんでした。
そこで自分なりにイメージしやすいところまで落とし込んで、公式的なものを覚えて臨みました。
ですから問10を見た瞬間「1点もらった!」と思いました。
その方法をご紹介します。
今年の問題を見てみましょう。
抵当権の設定された債務者Aの甲土地ですが、競売による売却代金は2,400万円です。
そしてB・C・Dの債権金額は以下の通り。
債権者B(一番抵当権) | 1,000万円 |
債権者C(二番抵当権) | 1,200万円 |
債権者D(三番抵当権) | 2,000万円 |
まず基本の確認も兼ねて、一切の放棄・譲渡がない状態で各人の配当がいくらになるのか計算してみます。
Bは最初に1,000万円満額を受け取れます。
Bが受け取った後の配当金の残額は
2,400 – 1,000 = 1,400万円
となります。
ここから更に債権者Cが配当を受けます。すると残りは
1,400 – 1,200 = 200万円
となり、これが債務者Dが受け取れる金額です。
Dは債権額2,000万円に対して、200万円しか回収できません。
まとめると、
B=1,000万円、C=1,200万円、D=200万円
となります。
ここまで理解出来たら、ほとんど正解したようなもんです。
さて、ここから「BがDのために順位を放棄・譲渡した」という場合を考えていきましょう。
この時、抵当権順位の放棄・譲渡の問題で「他の債権者(この場合はC)の受け取る金額は放棄・譲渡の有無で変わらない」という考え方が検算をする上で役立ちます。
抵当権順位の放棄・譲渡は「対象の相手と同じ順位」に下りるイメージ
(1)放棄の場合
まずBが一旦自分の順位で受け取れる全額を受け取っておき、全員の配当を終えたところでBがDの元にやってきます。
B「俺は1000万円回収できた。お前はいくら回収できた?」
D「200万だけ…」
B「そっか、厳しいな。じゃあ、お前のために順位を放棄してやるよ。」
そうすると、どうなるか?
一旦、BとDの配当全部を合わせます。
この山から「BとDの債権額に応じて比例配分」する。これだけです!
BとDが回収できた金額 = 1,000 + 200 = 1,200万円
BとDの持っていた債権額の比は、
1,000万円 : 2,000万円 = 1 : 2
です。
1,200万円をB=1に対してD=2になるよう、比例分配します。
すると、B=400万円、D=800万円となり解決です。(肢3が正解)
蚊帳の外の債権者Cは放棄のないケースと同じ1,200万円です。
(2)譲渡の場合
上と同じようにBが一旦自分の順位で受け取れる全額を受け取り、全員の配当を終えたところでBがDの元にやってきました。
B「1000万円全額回収できたけど、お前大丈夫?」
D「200万だけ。全然大丈夫ちゃうわ…」
B「それはつらたん。仕方ない、お前のために順位を譲渡してやるよ。」
譲渡の場合も同様に、一旦BとDの配当全部を合わせます。
放棄と違うのは、この山から「Dへ優先的に充当する」する点です。
「譲渡」はダチョウ倶楽部の「どうぞ、どうぞ」と覚えておきましょうw
1,200万円の山から、Dの債権額(2,000万円)分だけ充当します。
するとこの場合、Dは800万円未回収のまま配当原資が底を尽きます。順位を譲渡したBの取り分はありません。
つまり、B=0円、D=1,200万円で終了です。
この場合もCは譲渡のないケースと同じ1,200万円です。
(3)「抵当権順位の放棄・譲渡」と「抵当権の放棄・譲渡」
上記は「抵当権順位」の話で、「抵当権」自体の話ではありません。
抵当権を譲渡・放棄しても優先して弁済を受けれなくなっただけで、回収する権利は持ってます。(相続における「遺留分」の放棄に似てますね)
その場合、債権者は抵当権を設定していない「無担保債権者」と同じ「モブ債権者」の立ち位置になります。
ですから「抵当権」の放棄・譲渡は、無担保債権者のための「抵当権順位」の放棄・譲渡というイメージでいいでしょう。
とりあえず混同されないようご注意ください。
(4) 計算手順まとめ
- イレギュラーなしでの各債権者の配当金額を求める。
- 放棄・譲渡する側と、される側の配当金額を合算する。
- 放棄なら比例配分、譲渡なら優先充当。
(余談)
問題設定によっては、譲渡した側の受け取りが0円になることも多々あります。こんな奇特なやつおらんやろw
コメント