成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
「宅建業の免許」や「宅建士の登録」の基準の話で、
「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」
という言い回しがあります。
「成年者と同じレベルに達していない」というのは分かるのですが、それって誰がどうやって判断するの?って話です。
申請の際に面接するわけでもないですよね?
このような法律的な話は、何らかの客観的な判断基準があるはずです。
ネットで調べた結果、
「営業に関して成年者と同一の行為能力を有している未成年者」
とは
「法定代理人(親権者)から営業の許可を受けている未成年者」
ということのようです。
つまりこの否定で、
「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」
とは
「法定代理人(親権者)から営業の許可を受けていない未成年者」
ということになります。
以下、話を解りやすくするために未成年者の法定代理人を「親」とします。
未成年者の宅建業の免許取得
「宅建業の免許」の場合、未成年者が免許を取得するには、
のが一つ。
もう一つは親の許可を得ないまま未成年が宅建業をやろうとしたケースで、その場合免許権者は
という流れになります。
親が許さなくても、本人と親の双方が欠格事由に該当しなければ免許OKです。
成年者ならば本人さえ欠格事由に該当していなければOKですが、未成年で親の許可を得て営業していない場合は後ろ盾である親もチェックするということですね。
(1)は独立した大人としてみなされ、親(法定代理人)の影響を受けなくなります。
- 未成年を理由に営業に関する行為を取り消すことができない。
- 親(法定代理人)が欠格事由に相当するようなことがあっても、免許を取り消されない。
(2)は親の許可を得ずに行った宅建業に関する業務は取り消すことができます。
また親が欠格事由に相当すると、免許を取り消されます。
お客の立場ではこんな不安定な業者とは取引したくないと思うのですが、実在するのでしょうか?
未成年者の宅建士の登録
未成年者が宅建試験に受かった後に「宅建士の登録」をしようと思っても原則できません。
(参考) 宅建業法 第18条「宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」
例外は「営業に関し成年者と同一の行為能力を有する」場合で、つまり法定代理人(親)の許可があれば登録を受けれます。
何だか免許と似たような話です。
同じ流れで、親の許可がない場合も本人・親双方に欠格事由がなければ登録できるかと言うと、そうではないようです。
ここが免許と違う所で、「未成年の宅建士登録は親の許可がないと絶対ダメ」ということになります。
補足ですが、親の許可をもらって未成年が宅建士の登録を出来ても、専任の宅建士にはなれません。
ただこれも例外があって、未成年自らが経営者(個人事業主・法人の役員)ならば、未成年だけど「専任の宅建士」として扱われます。
自分で事業を営んでいるから専任扱いが認めらるだけで、普通に就職して専任の宅建士になるのは不可能です。
これに関連する過去問です。
(令和2年度12月試験 問38-2)
・未成年者も、法定代理人の同意があれば、宅地建物取引業者の事務所に置かれる専任の宅地建物取引士となることができる。
正解は✖ですが、解釈が分かれているんですよね。
「法定代理人の同意」≠「法定代理人による営業の許可」と捉えて
「同意だけでは、営業に関し成年者と同一の行為能力を有したとは言えない」→「宅建士登録自体がムリ」→「当然専任も不可能」
という考え方と、
「同意で成年者と同一扱い」→「宅建士登録まではできる」→「でも未成年だから、宅建業者の事務所(他社)に置かれる専任の宅建士になるのはムリだよね」
という解釈です。
私は「同意」の中に「営業の許可」は含まれると思うので、後者の方がしっくりきます。
ちなみに宅建士試験では過去問で「未成年でも宅建士登録ができる」旨を出題しています。
(令和4年度 問33-ア)
・宅地建物取引士資格試験は未成年者でも受験することができるが、宅地建物取引士の登録は成年に達するまでいかなる場合にも受けることができない。
個数問題ですが、この肢は✖とされています。
前半部分は正しいけど、後半部分が誤りであると。
問題の意図として、出題者側も「条件次第では未成年でも宅建士の登録が可能ですよ」と言っている訳です。
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